No.77 夫は仕事とヘルニアとの格闘で毎日大変。
寒い季節が訪れると、夫は戦々恐々としていた。重い物を持つ仕事に従事しているせいで以前腰をやっており、痛みに神経過敏になるのだ。だからちょっと秋風が吹き始めるとコルセットを巻いて出勤していたし、自分の身体を守る術を身に付けていた。休日にはウォーキングやストレッチで身体を鍛えることも忘れなかった。今の仕事に就いて間もない頃、若さにかまけて油断していたらヘルニアだと告げられて、手術なしで何とかごまかしてきたのだと聞いたことがあった。
その時余程辛い経験をしたのか、「もう2度と、あの痛みは御免だ」が徹底されたのだ。休日に行うのはウォーキングだけではなく、ちょっとおかしいなと感じたら整体院に足を運んでいた。この整体師とは顔なじみになっていて身体の隅々まで知られていたから、彼の指摘することに対しては夫は信頼を寄せていた。実際、腰痛が再発しないのもストレッチが上手く行っているのもこの整体師のお陰だと言えるだろう。
私は今までのところ腰痛の経験がないから、夫の辛さの本当のところは分からない。けれども職場の人たちの話などから、想像することは出来た。だから今年はいくつか私なりのプランを立てていたのだ。休日のウォーキングには私も同行すること、整体院が推奨するストレッチを私も教えてもらって実行すること。そしてこれは夫の意向次第だが、休日のウォーキングやストレッチの後は2人で温泉に行こうというもの。温泉では食事も摂れるし、仮眠も出来る。腰痛との闘いを私も応援していると、共に楽しみながら乗り越えて行こうという意思表示のつもりだった。
その最初の闘いが明日の休日だ。夫は喜んでくれたし、温泉も楽しみだ。夫と一緒にトレーニングを行うことで、私の身体の健康にもつながる。この温泉は年末年始も営業しているから、今年はどこにも行かずに温泉三昧の日々を過ごそうと話し合った。特段何かをするというわけでもないのに、私たちの心がワクワクしているのはどうしたことだろう?腰痛に良い効果を与えるという食材を使った夕食の用意をしながら、私は明日の準備に抜かりはないか、頭の中で反芻し始めた。